ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ作「東方三博士の礼拝」のビデオです。解説を意訳しました。

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Published on 27 Apr 2014 by Smarthistory, Art History at Khan Academy

Gentile da Fabriano, Adoration of the Magi, 1423   

初期ルネサンスの時期、フィレンツェの裕福な一族が、サンタ・トリニタ教会にある一族専用の礼拝堂のために、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノに豪華な祭壇画を注文しました。

主題は「東方三博士の礼拝」です。東方三博士(マギ)とは東国の3人の王で、星に導かれて生まれたばかりの幼子イエスを訪れ、贈り物を捧げます。また、自ら王冠をはずしてイエスキリストの足下に捧げることで、イエスが王の中の王であることを認めます。

この絵画は、かなり裕福な人物が注文しました。実質上、フィレンツェの王ですが、フィレンツェは共和国だったので、実際には王は存在しませんでした。フィレンツェは独立した政治体制で、裕福な商人とギルド(同業者組合)が共同で統治していました。フィレンツェの人々は独立した共和国の一員であることにプライドをもち、特に15世紀初頭には膨大な富を蓄積していきました。この絵画は、その富を誇らしげに示している典型的な例です。

ファブリアーノは北イタリア出身で、フィレンツェにやってきて腰を落ち着けました。それは、そこに富があり芸術擁護者がいたからです。この祭壇画制作には相当な金額が支払われました。当時の職人の年収の6倍の金額でした。

この絵画の様式は豪華絢爛で、金や貴石がふんだんに使われており、フィレンツェの裕福な一族の存在感を誇示するのに最適な方法でした。ストロッツィ家は主に金を扱う金融業で財を蓄積しました。ただ、この祭壇画を注文したパラ・ストロッツィは、家業である金融業には関心を寄せず、芸術や人文主義を学ぶことに熱中していました。

フィレンツェのウフィッツィ美術館でこの絵画の前に立っていると、この絵を見ている人たちに興味を引かれます。皆、絵の中の様々な逸話を見つけ出そうとしていて、この絵が制作された当時の人々の様子を彷彿とさせます。この絵では逸話を容易に見つけ出すことができます。

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この絵画は創意に富んだ構成になっています。連続した風景の中に、一続きの時間が描かれ物語になっています。左上角には、遠景に三博士が海の向こうベツレヘム上空の星を眺めています。これは、着用している衣服から東の国で起きていることだということがわかります。次に、中央のアーチ下では、三博士がエルサレムに入場しています。そこでヘロデ王は3人に生まれたばかりの王を見つけたら報告するように依頼します。ヘロデ王は自分の王座存続を危惧し、その子を殺害しようと企んでいました。次に、右上角では、三博士がベツレヘムに到着します。恐らく、私たちの目の前で展開している場面は、そこで起こっている出来事です。

大勢の群衆が、三博士がキリストと聖母マリアに近づいていくのを見守っています。幼児キリストは遊んでいます。足をみてください。それから、三博士は、それぞれ、キリストの前にひざまずく段階を示しています。聖母マリアの背後にいる女官は、最初の贈り物を吟味しています。ヨセフはマリアのすぐ左後ろに立っています。最も若い博士の足から、拍車が外されています。キリストに近づくためです。

この場面は全体的に宮廷的な雰囲気を醸し出しています。今話題にでた拍車もすばらしいものです。実際、立体的に見えますが、石膏で作られ金箔が貼られていて、本物の金の固まりでできているように見え、宝石類が画面に貼られているように見えます。このような金の取り扱いは、ストロッツィ家の富を象徴しています。

この絵画の様式は、ルネサンス様式が発展する前に盛んに描かれた国際ゴシック様式とされています。それは、この絵画には、初期ルネサンスに関連づけられる要素が描かれていないからです。マサッチオが数年後に描いた壁画とは異なり、この絵には遠近法が描かれていませんし、実際、人物像の上部にある建築要素が前景に押し出されています。ファブリアーノは、人体を重ねたり斜めに描くことを避けています。ただ、同時に、右の2頭の馬を短縮法で描き、また、人物像も手前より奥の方を縮小して描いて、3次元の空間を作り出そうとしています。これは、恐らくシエナの町の広大な風景を描いたアンブロージョ・ロレンツェッティ等の影響を受けているとも考えられます。

主要な人物像、特に、聖母マリアは、引き延ばして描いています。膝のあたりは彫刻的に描こうとしていますが、少し離れてみると、マリアは長身で細く見えます。ここで強調しているのはマリアの優美さや美しさで、解剖学的に正確に描いてはいません。それは、ルネサンス様式ではなくゴシック様式の特徴です。

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主要パネルの上下には小型のパネルが配置されています。上部中央ではキリストが祝福を授けていて、その左右には受胎告知が描かれています。下部には3枚のプラデッラがあり、幼児キリストの3つの場面が描かれています。左はキリスト降誕、中央はエジプト逃避、そして右は聖燭祭です。

キリスト降誕を見てみましょう。これは美術史上初の夜の場面です。月や星の光が差し込み、天使や幼児キリストが輝いています。他にも見事に描かれた詳細を見てみましょう。右側の人物がかぶっているクジャクの羽でできた王冠、枠に描かれた花が外側に飛び出している様子など、見るべきとことが多くあり、細部の描写が蓄積されています。それでも、後期中世ゴシックの伝統に属しています。そして、膨大な富がフィレンツェルネサンスを可能にしたことを思い起こさせてくれます。

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